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教えてドクターQ&Aarticle

2024年12月

Q.塩分を抑えた食事を取っているつもりなのですが、やたらとのどが渇きます。妻から、糖尿病ではと言われて心配です

一般的に塩分や糖分を多く摂取すると血液中のナトリウムやブドウ糖の濃度が上昇し、血液の浸透圧が高くなることによって脳の口渇中枢が刺激されてのどが渇きます。塩分を控えているということであれば、口渇の原因は塩分ではなく糖分の可能性がありますので、ご指摘の通り糖尿病の検査も受けることをお勧めします。ただ糖尿病で口渇が生じる場合は既に重症化している可能性が高く、口渇が生じる頃には多尿や体重減少など他の症状も併発していることが多いです。また糖尿病は徐々に進行する疾患であるため、その状態に至るまでに数年以上の経過を要していることが多く、毎年定期的に健康診断を受けていれば、口渇・多尿・体重減少などの症状が出る前に糖尿病を見つけて治療することが可能です。最近では多くの患者様が健康診断で糖尿病を指摘されて早めに受診して頂けるようになったこともあり、口渇・多尿・体重減少などの典型的な症状から重度の糖尿病を見つける機会は昔ほど多くなくなってきた印象があります。現在でもしばしば見かけるものは清涼飲料水の多量摂取による「清涼飲料水ケトーシス」、世間的には「ペットボトル症候群」と呼ばれているものです。

インスリンを使用している患者様で夜間低血糖を起こす原因としては、①夕食量に比べて夕食前の「超速効型インスリン」の単位数が多かった、②眠前に使用している「持効型インスリン」の単位数が多かった、などの原因が考えられます。インスリンにも様々なタイプがあり、主に食事前に使用して食後の血糖値を抑制する「超速効型インスリン」、またインスリンの基礎分泌の補充として使用し、食事に関係なく1日1回使用する「持効型インスリン」、さらに両者を混在させた「混合型インスリン」などがあります。質問者の方がどのようなインスリンを使用しているかにもよりますが、大よそ就寝してすぐに低血糖を起こす場合は夕食前の「超速効型インスリン」が原因であることが多く、深夜から明け方にかけての低血糖は「持効型インスリン」であることが多いです。医師側としては低血糖を起こしたタイミングに対して最も責任を持つインスリンはどれかということを推測し、そのインスリンの単位数を減らすことで低血糖の再発防止をします。低血糖にも程度がありますが、重症低血糖まで至ると翌日の体調に影響が出るだけでなく、心血管疾患のリスク増大や認知機能の低下など、医学的なリスクが大きく上がることが近年では知られるようになりました。夜間低血糖の予防策として夕食後や眠前の血糖値を予め上げておく方法も考えられますが、糖尿病の治療としては本末転倒になりますので、やはり低血糖を起こしたタイミングに責任を持つインスリンの単位数を減量することが最適な方法です。また近年ではインスリン以外にも強力に血糖値や体重を下げる薬剤があるため、現在インスリンを使用されている患者様は本当にインスリンが必要なのかどうか、一度糖尿病専門医を受診して評価して頂くことをお勧めします。特に質問者の方のように過去10年以上前にインスリンを導入された患者様は、当時としては他の治療手段が少なかったためにインスリンが導入された方も多く、現代の治療に照らし合わせればインスリンの減量や離脱が可能な患者様もいらっしゃいます。そもそも低血糖を起こさない最大の予防法はインスリンの使用を最小限にすることですので、現在インスリンを使用されている患者様は是非、糖尿病専門医を受診して下さい。

2024年8月

Q. 糖尿病を発症し、10年以上インスリン療法を受けています。血糖管理できるようになってきましたが、まれに睡眠中に低血糖を起こすので予防方法を教えてください

インスリンを使用している患者様で夜間低血糖を起こす原因としては、①夕食量に比べて夕食前の「超速効型インスリン」の単位数が多かった、②眠前に使用している「持効型インスリン」の単位数が多かった、などの原因が考えられます。インスリンにも様々なタイプがあり、主に食事前に使用して食後の血糖値を抑制する「超速効型インスリン」、またインスリンの基礎分泌の補充として使用し、食事に関係なく1日1回使用する「持効型インスリン」、さらに両者を混在させた「混合型インスリン」などがあります。質問者の方がどのようなインスリンを使用しているかにもよりますが、大よそ就寝してすぐに低血糖を起こす場合は夕食前の「超速効型インスリン」が原因であることが多く、深夜から明け方にかけての低血糖は「持効型インスリン」であることが多いです。医師側としては低血糖を起こしたタイミングに対して最も責任を持つインスリンはどれかということを推測し、そのインスリンの単位数を減らすことで低血糖の再発防止をします。低血糖にも程度がありますが、重症低血糖まで至ると翌日の体調に影響が出るだけでなく、心血管疾患のリスク増大や認知機能の低下など、医学的なリスクが大きく上がることが近年では知られるようになりました。夜間低血糖の予防策として夕食後や眠前の血糖値を予め上げておく方法も考えられますが、糖尿病の治療としては本末転倒になりますので、やはり低血糖を起こしたタイミングに責任を持つインスリンの単位数を減量することが最適な方法です。また近年ではインスリン以外にも強力に血糖値や体重を下げる薬剤があるため、現在インスリンを使用されている患者様は本当にインスリンが必要なのかどうか、一度糖尿病専門医を受診して評価して頂くことをお勧めします。特に質問者の方のように過去10年以上前にインスリンを導入された患者様は、当時としては他の治療手段が少なかったためにインスリンが導入された方も多く、現代の治療に照らし合わせればインスリンの減量や離脱が可能な患者様もいらっしゃいます。そもそも低血糖を起こさない最大の予防法はインスリンの使用を最小限にすることですので、現在インスリンを使用されている患者様は是非、糖尿病専門医を受診して下さい。

2024年4月

Q. 血圧の上と下の差が大きいと良くないと聞いたのですが、どういうことでしょうか。詳しく教えてください

上の血圧を「収縮期血圧」、下の血圧を「拡張期血圧」と呼び、その差を「脈圧」と言います。収縮期血圧は心臓が収縮して動脈に送り出す際の血圧、拡張期血圧は心臓が拡張して血液を受け入れる際の血圧です。収縮期血圧と拡張期血圧の圧格差 (=脈圧) を用いて心臓から血液を送り出しているのですが、その脈圧の正常値は40-60mmHgと言われています。大よそ正常の患者さんの血圧は120/70mmHg、高血圧の基準値も140/90mmHgと規定されており、脈圧が50mmHg前後であることが前提となっています。ところが心臓から血液が駆出される先にある大動脈に動脈硬化が起こって血管の伸展性がなくなると、大動脈の血流の緩衝作用が失われて血液を駆出している収縮時血圧は高くなり、血液が駆出されていない拡張期血圧は低下するため、結果として脈圧が大きくなります。つまり我々医師としては、脈圧が大きいことを見たら動脈硬化が背景にあることを考えなければいけません。動脈硬化は狭心症、心筋梗塞、脳梗塞などの原因となりますので、動脈硬化を進展させる要因、すなわち糖尿病・高血圧・脂質異常症などが放置されていないかどうかも調べる必要があります。動脈硬化は頸動脈エコーやABI/PWVと言われる機器で調べることが可能であり、糖尿病・高血圧・脂質異常症は血圧の測定並びに採血をして頂ければすぐにわかります。また極端に脈圧が大きい場合は、大動脈弁閉鎖不全症 (心臓の出口である大動脈弁の閉まりが悪くなり、血液が逆流する疾患) 、バセドウ病に代表される甲状腺機能亢進症、高度の貧血などを合併している可能性も考える必要があります。大動脈弁閉鎖不全症は心臓の超音波検査 (実際に心臓の超音波検査を行える医療機関は少なく、大きい病院か比較的規模の大きいクリニックに限られると思います)、甲状腺機能亢進症や貧血は採血を行うことでわかります。逆に脈圧が低下したときに考えなければいけない疾患もあります。例えば心不全になって心臓の収縮力が低下すると収縮期血圧が下がりますので、脈圧は低下します。また心臓を包む膜に液体などが貯まる心タンポナーデと言われる状態になると、心臓が十分に拡張することが出来ず、拡張期血圧が上がるため、脈圧は低下します。このように脈圧は高過ぎても低過ぎても背景に疾患が見つかることがあります。脈圧の正常値は40-60mmHgですので、血圧を測定したら是非上の血圧から下の血圧を引いてご自身の脈圧を計算してみて下さい。60mmHg以上もしくは40mmHg以下であれば、背景に何か疾患がないかどうか調べる必要がありますので、かかりつけの内科を受診して下さい。

2024年1月

Q. 糖尿病と診断されました。お酒が大好きなのに、控えるよう言われてショックです。ウイスキーや焼酎名などの糖質が含まれていないお酒でも、控えたほうがいいのでしょうか。

お酒類の糖質以外にもアルコールが肝臓を介して血糖値を上下させることがあり、過剰なアルコール摂取は高血糖及び低血糖のリスクになるため、注意が必要です。アルコール自体は体内でブドウ糖に変化しないため、血糖値を上げることはありませんが、アルコールの作用として肝臓内に貯留されているグリコーゲンを分解してブドウ糖を生成することから、肝臓を介して血糖値が上がることがあります。もちろん糖分が含まれているお酒では血糖値はさらに上昇することになります。一方で日頃からお酒の量が多い患者さんの場合、肝臓内のグリコーゲンが減少していることが多く、またグリコーゲン以外のエネルギー産生が抑制されることから低血糖も起こしやすい状態になってしまいます。つまり過剰なアルコール摂取は血糖値が上がりやすく、下がりやすい状況にもしてしまうため、血糖値が乱高下して管理が難しくなることから、我々糖尿病専門医としては過剰な飲酒を控えて頂くように指導することが多いと思われます。とは言っても、アルコールの量が適度であれば、糖尿病の患者様であっても飲酒を禁止するわけではありません。厚生労働省の定める適度な飲酒量は1日アルコール20g程度と言われています。お酒の種類によってアルコール度数が違いますので、アルコール20gに相当する酒量はアルコール度数5%のビールで500ml、アルコール度数7%のチューハイで350ml、日本酒で180ml (一合)、ワインで200ml (グラス2杯)、ウィスキーで60ml (ダブル一杯)、アルコール度数25%の焼酎で100ml (グラス半分) が目安になります。大よそのアルコール量はお酒の量 (ml) ×アルコール度数/100×0.8 (アルコールの比重) で計算出来ますので、複数の種類のお酒を飲まれる方は1日20gを超えないように調整して下さい。ちなみに女性の場合は男性の半分である1日10gが目安とも言われています。また肝硬変など重度の肝障害や急性膵炎後など重度の膵障害を有する患者様につきましては、適量であっても禁酒を指示することがありますので、主治医にご確認頂けると幸いです。2023年6月に日本肝臓学会よりASTが30を超える患者様は医療機関を受診して頂きたいとの発表がありました。具体的にはB型肝炎やC型肝炎、脂肪肝、アルコール性肝炎、自己免疫性肝炎などを鑑別する必要がありますが、特に脂肪肝は糖尿病との結びつきが強いと言われているため、注意が必要です。健康診断などで肝臓に異常があると指摘された患者様につきましては、是非かかりつけの内科を受診して頂けると幸いです。

2023年10月

Q. 糖尿病になると、腎臓に影響が出るのはなぜでしょうか?

糖尿病を放置すると糖尿病性腎症を発症して、最終的に透析になるということは、多くの方がご存じかと思います。糖尿病の合併症は糖尿病性末梢神経障害、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症などの細小血管障害と狭心症、心筋梗塞、脳梗塞、閉塞性動脈硬化症などの大血管障害症が分けることが出来ます。神経障害、網膜症、腎症は糖尿病の三大合併症とも言われ、細小血管障害である糖尿病性腎症においては、腎臓を構成する糸球体の毛細血管が傷害を受けることによって発症します。もう少し専門的に言うと、①高血糖による酸化ストレス、②糸球体内圧の上昇、③糸球体や尿細管細胞の線維化、④終末糖化産物の蓄積、⑤炎症による腎臓の損傷と線維化、などの原因が考えられており、それらに対する治療薬が開発されている状況でもあります。糖尿病性腎症は尿アルブミン定量検査という精密検査を行って尿蛋白の程度を測定し、採血の結果から分かるeGFRという値と併せて診断します。eGFRによる腎臓の評価は以下の6段階に分かれます。G1: eGFR 90以上で正常、G2: eGFR 60-90で正常または軽度低下、G3a: eGFR 45-60で軽度から中等度低下、G3b: eGFR 30-45で中等度から高度低下、G4: eGFR 15-30で高度低下、G5: eGFR 15以下で末期腎不全。eGFR 60未満 (G3a以降) の患者様は医療機関に受診して頂き、尿検査と併せて定期的なフォローアップを受けて頂く必要があります。現在は糖尿病性腎症や慢性腎臓病に対して高血圧の治療薬であるACE阻害薬やARB、糖尿病の治療薬であるSGLT-2阻害薬、そしてMR拮抗薬といった有用性の高い薬剤が使えるようになりました。また最近の研究からは糖尿病の治療薬であるGLP-1作動薬も腎臓に対して有効である可能性が示されました。これらの薬剤は糖尿病専門医が日常的に使う薬剤でもありますので、健康診断などでeGFRが60ml/min未満または尿蛋白陽性を指摘された患者様は、是非糖尿病専門医もしくは腎臓内科専門医を受診して下さい。

2023年6月

Q. 腎機能の数値を表すeGFRとは何ですか?何がわかるのでしょうか?

eGFRは腎臓の機能を表す値であり、採血の結果から分かるCrの値を元に年齢、性別で補正して個人差を少なくした指標です。当院ではより正確なeGFRの値を出すためにシスタチンCと言われる別のマーカーを使用することもあります。近年では「慢性腎臓病」と言われる疾患概念が定着して来ましたが、慢性腎臓病の重症度評価はこのeGFRの値と尿検査によってわかる尿蛋白量を元に行われます。特に糖尿病のある患者様は保険診療で尿アルブミン定量検査と言われる精密な尿検査を行うことが可能ですので、是非尿検査も行って頂けると幸いです。eGFRによる慢性腎臓病の評価は以下の6段階に分かれます。G1: eGFR 90以上で正常、G2: eGFR 60-90で正常または軽度低下、G3a: eGFR 45-60で軽度から中等度低下、G3b: eGFR 30-45で中等度から高度低下、G4: eGFR 15-30で高度低下、G5: eGFR 15以下で末期腎不全。eGFR 60未満 (G3a以降) の患者様は医療機関に受診して頂き、尿検査と併せて定期的なフォローアップを受けて頂く必要があります。またG5の段階になると透析導入を検討する必要があります。慢性腎臓病を合併する患者様の場合、心筋梗塞や脳卒中を引き起こしやすいことが知られており、注意が必要です。これまで慢性腎臓病の治療は原因となる高血圧や糖尿病の管理が大切と言われてきましたが、最近では慢性腎臓病に対する治療薬も出てきました。以前から高血圧の治療に使われているACE阻害薬またはARBと言われる降圧薬、糖尿病の治療に使われているSGLT-2阻害薬と言われる経口血糖降下薬、そしてMR拮抗薬と言われる薬剤にも腎保護効果があることが判明し、今後は慢性腎臓病の治療戦略も大きく変わって来ることが予想されます。eGFRが60未満または尿蛋白陽性を指摘された患者様は、是非慢性腎臓病に詳しい医師を受診して下さい。

2023年1月

Q. 大人の糖尿病の注意喚起はよく聞きますが、子どもの糖尿病については情報が少ないように思います。どういった症状で、どういう子がなりやすいのでしょうか。

糖尿病は長らく「生活習慣病」の一つと言われ、生活習慣が全ての原因であるかのように言われてきましたが、実は近年の研究によって遺伝的要因、体質的要因がこれまで想定されていた以上に大きいことがわかって来ました。ご両親がお二人とも糖尿病であった場合、そのお子様が将来的に糖尿病を発症する確率は50%とも言われています。糖尿病は血糖を下げるホルモンであるインスリンが十分に分泌されない (インスリン分泌不全)、もしくは分泌されたインスリンが十分に作用しない (インスリン抵抗性の増大) といった病態が起こり、そこに生活要因が加わることによって発症しますが、インスリン分泌不全やインスリン抵抗性の増大と言った糖尿病の本質的な病態の部分は、遺伝による影響があると現在では考えられていますので、ご両親や血の繋がったご親族の方に糖尿病の患者様がいらっしゃる場合、そのお子様は糖尿病になりやすくなるということになります。糖尿病は重症化すると短期的には多飲、多尿、体重減少などといった有名な症状が起こり、長期間放置すると合併症による症状、例えば糖尿病性末梢神経障害による足の痺れ、糖尿病性網膜症による視力低下、糖尿病性腎症による足の浮腫などが起こりますが、お子様の場合は糖尿病の罹患歴が短いことから、合併症による症状では見つからず、糖尿病が重症化してから多飲、多尿、体重減少などの症状で見つかることがほとんどです。最近では食生活の変化もあって10代のお子様の糖尿病が世界的に増えており、糖尿病が重症化するまでに早期に見つけることが大切になっています。学校検尿などで尿糖陽性を指摘されたお子様は、是非糖尿病専門医を受診して下さい。

2022年10月

Q. 糖尿病治療中です。いわゆる基礎疾患持ちになるので、コロナウイルスに罹患したときが心配です。糖尿病があると、コロナウイルスの影響は基礎疾患がない人とはどのような違いがあるのでしょうか。

糖尿病は基礎疾患の中でも代表的な疾患であり、コロナウイルスに限らず、他の多くの疾患においても重症化のリスク因子になります。一方で糖尿病があるからと言ってコロナウイルスに罹患しやすくなるということはありません。つまり糖尿病の患者様はコロナウイルスの罹患率には影響なく、罹患すると重症化しやすくなるということが問題になります。コロナウイルスの重症化の因子は糖尿病だけでなく、糖尿病と合併しやすい肥満や心不全もリスクになります。欧米では多くの糖尿病の患者様がコロナウイルスによって亡くなりましたが、糖尿病が十分にコントロールされていなかったこと、肥満の患者様が多かったこと、そして心不全の有病率が高かったことなどが影響していると思われます。我が国では肥満の患者様は欧米に比べて少なく、医療機関に受診さえして頂ければ、糖尿病や心不全の治療をきちんと受けることが出来ますので、糖尿病や肥満、心不全などの基礎疾患がある患者様は医療機関に受診して頂き、万が一コロナウイルスに罹患しても重症化しないように、しっかりとした治療を受けて頂けると幸いです。また新型コロナウイルスのワクチンは罹患率を下げるだけでなく、重症化の予防にも大きな役割を果たすことがわかっています。重症者の患者さまの数が増えると、入院患者さまを引き受ける基幹病院の診療が大きく圧迫されてしまいますので、ぜひ多くの患者さまにワクチンを接種していただけると幸いです。

2022年8月

Q. 糖尿病を患う高齢の母親がいます。高齢者の糖尿病治療で、特に気をつけることを教えてください。

高齢者の糖尿病患者さんは糖尿病だけでなく、他の複数の疾患を合併していることが多いため、我々医師としては高齢者の糖尿病患者さんを診たら、まず併発疾患や合併症をきちんと評価することが大切です。最近の糖尿病の治療薬は単純に血糖値を下げるだけでなく、体重を減らしたり、血圧を下げたり、尿酸値を下げたり、心不全を改善させたり、慢性腎臓病を改善させたりするなどの複数の作用を持つ薬剤があり、近年の糖尿病の治療戦略は患者さん一人一人の併発疾患や合併症を見て決めることが世界的な潮流になっています。また食事療法についても、過度に食事摂取量を減らしてしまうと高齢者の患者さんは筋肉量が下がる「サルコペニア」と言われる状態になってしまうことがありますので、必要な栄養素はしっかりと摂取して頂く必要があります。さらに高齢者の糖尿病患者さんは食事摂取量が不安定になったり、お薬を間違えて飲むことがしばしば見られますので、低血糖に対する備えが必要です。私は全国の医師の先生方を対象に講演の形で高齢者の糖尿病患者さんの診察方法を教えることがありますが、最も大切なこととして重症低血糖を起こしやすいSU剤やインスリンの使用は最小限にするようにお伝えさせて頂いています。近年の糖尿病治療薬の進歩に伴い、適切な処方変更を行えばSU剤やインスリンを離脱出来る患者さんも増えて来ましたが、薬剤のスイッチングには高度な処方技術が必要になるため、未だ多くの高齢の糖尿病患者さんで漫然とSU剤やインスリンが処方されているケースが見られます。高齢の糖尿病患者さんの診察は高度な診療技術が必要になりますので、糖尿病専門医かつ高齢者の診療に慣れている医師を受診して頂けると幸いです。

2022年6月

Q. 糖尿病治療はインスリン注射のイメージがあるのですが、注射治療しなくても糖尿病は治りますか?初期の糖尿病と診断され、今は食事制限指導のみなのですが、今後進行していくのでは、治療も複雑になるのではといろいろ不安です。

糖尿病の病態の本質は、膵臓のβ細胞からインスリンが十分に出なくなる「インスリン分泌の低下」と、身体がインスリンを受け取りにくくなる「インスリン抵抗性の増大」であり、インスリン分泌が極端に低下してしまった患者様につきましては、インスリン注射が必要になることがあります。一方でインスリン分泌が保たれており、インスリン抵抗性の増大が主原因の糖尿病の患者様につきましては、インスリン注射は必須ではなく、生活習慣の改善やインスリン抵抗性を改善する飲み薬などで血糖をコントロールすることが可能です。初期の糖尿病の多くはインスリン分泌は保たれており、インスリン抵抗性の増大が糖尿病の主原因であることが多いため、早期の段階から食事療法・運動療法などを行ってインスリン抵抗性を改善して頂ければ、その後の糖尿病の進行を食い止めることが出来ます。逆にインスリン抵抗性が高いまま放置すると、膵臓から過剰な量のインスリンが分泌され続け、最終的に膵臓のβ細胞が疲弊してインスリン分泌が低下していきます。そして飲み薬を複数使用しても血糖コントロールの維持が難しくなってきたら、やはりインスリン注射を考えなければいけなくなります。一度減ってしまった膵臓のβ細胞を元に戻すことは困難であり、そのような意味では糖尿病を根治させることは出来ません。つまり残された膵β細胞とインスリン分泌能をいかに大切に保護するかが糖尿病の治療において大切とも言えます。インスリン分泌能は採血で測定することが出来ますので、気になる患者様は是非、糖尿病専門医を受診して下さい。

2022年4月

Q. 「糖尿病予備群」とは、どんな人たちのことですか?また、自分が糖尿病予備群かを知るにはどのような方法がありますか?

「糖尿病予備群」は別名「境界型糖尿病」と言われますが、診断基準上、正常血糖と糖尿病の間の値を示す患者様のことを指します。正常の血糖値は空腹時血糖110mg/dl未満、食後血糖140mg/dl未満、HbA1c 6.0%未満であり、糖尿病の診断基準は空腹時血糖126mg/dl以上、食後血糖200mg/dl以上、HbA1c 6.5%以上ですが、その間にある空腹時血糖110-125mg/dl、食後血糖140-199mg/dl、HbA1c 6.0-6.4%の患者様は「糖尿病予備群」もしくは「境界型糖尿病」の診断になります。糖尿病専門医を受診し、採血を受けて頂ければ、正常血糖なのか、境界型糖尿病なのか、糖尿病なのかを大よそ推定することが出来ますが、「75g経口ブドウ糖負荷試験」を行うと、より正確に診断することが出来ます。「糖尿病予備群」や「境界型糖尿病」の患者様は、これまでの研究によって動脈硬化の進行による狭心症、心筋梗塞、脳卒中などの発症リスクが増加し、死亡率が上がることがわかっています。また近年の研究では、「境界型糖尿病」は将来的な認知症の発症リスクになることが判明し、決して油断してはいけない疾患として考えられるようになりました。糖尿病のガイドラインでは、「75g経口ブドウ糖負荷試験」は健康診断などで空腹時血糖110mg/dl以上、食後血糖140mg/dl以上、HbA1c 6.0%以上を指摘された「糖尿病予備群」や「境界型糖尿病」の患者様だけでなく、空腹時血糖100-109mg/dl、HbA1c 5.6-5.9%の正常高値血糖の患者様にも行うことが推奨されていますので、健康診断などで血糖高値を指摘された患者様は、糖尿病専門医を受診して頂けると幸いです。

2022年2月

Q. 60歳で、糖尿病と高血圧があるので、朝早く起きて散歩をしようと思います。運動療法はこれでよいでしょうか?

糖尿病の治療は食事療法・運動療法・薬物療法 (内服薬、注射薬) の3本柱がありますが、運動療法は筋肉による糖や脂肪の利用を促進し、血糖コントロールの改善、インスリン感受性の増加、脂質代謝の改善、血圧低下などの効果が期待されるため、今は新型コロナウイルス流行の都合上、外出しにくい環境にはなっていますが、可能な範囲で運動療法を行って頂けると幸いです。運動療法の内容は有酸素運動 (歩行・ジョギング・水泳・自転車などの全身運動) とレジスタンス運動 (腹筋、ダンベル、腕立て伏せ、スクワットなどの筋肉トレーニング) に分かれますが、両方の運動を併用した方が運動療法の効果が上がることがわかっています。歩行やジョギングは最も手軽に行える運動療法であり、1日8000歩から1万歩が目安とも言われていますが、実際の距離にすると5-6km、時間にすると約60分から90分ほど歩くことになりますので、実際にやってみるとなかなか大変です。そこで英国の取り組みではありますが、1日10分以上の歩行を推奨する「アクティブ 10」というキャンペーンが参考になります。1日10分間の歩行でも早期死亡のリスクを15%減らすことがわかっていますが、スマートフォンの歩数計機能を利用し、アプリによって1日10分以上歩行が出来ているかどうかを自動で判定し、徐々に歩行時間を増やして行くように誘導します。可能な環境であれば、歩行などの有酸素運動に筋肉トレーニングなどのレジスタンス運動を組み合わせることが理想ですが、出来る範囲内で構いません。一方で糖尿病が重症であったり、合併症が進行している患者様には運動療法が適さないこともありますので、運動療法を行う前に事前に糖尿病専門医にご相談頂けると幸いで

2021年12月

Q. 主人の尿が異常に泡立っています。本人によると、ときどき甘い匂いがするとのこと。以前に受けた血液検査では、糖尿と診断されませんでしたが、心配です。糖尿病患者の尿の特徴について教えてください。

尿は粘稠度 (粘り気) が上がると泡立つことがあります。尿の粘稠度が上がる原因としては、糖尿病のように尿糖が陽性になる場合、尿蛋白が陽性になる場合、尿に細菌が感染した場合、ウロビリノーゲンが陽性になる場合、脱水になって尿が濃くなった場合、尿が酸性に傾いている場合などがあります。石鹸が泡立つのは、液体に含まれる界面活性物質が表面張力を弱め、泡の膜に界面活性物質が並んで空気を包み込むためですが、界面活性作用を持つ蛋白質やウロビリノーゲンが何らかの原因で増えてしまったり、その他の原因で界面活性物質の表面張力が弱まるような環境になると、尿の中にも泡が発生することがあります。糖尿病を放置した場合、尿糖が陽性になり、放置期間が長くなると糖尿病性腎症を合併して尿蛋白も陽性になります。また尿が酸性に傾くと糖尿病の発症頻度が上がるという研究結果もあり、これらの状況から糖尿病の患者さんの尿が泡立つ可能性は十分に考えられます。ご相談頂いた患者様の場合、糖尿病とは診断されなかったものの、ときどき尿から甘い匂いがするとことですので、例えば食後などに一時的に高血糖になり、そのときに尿糖が出ているのかもしれません。この場合は食後高血糖のみが高値になるタイプの境界型糖尿病の可能性がありますので、経口ブドウ糖負荷試験と言われる精密な糖尿病の検査を受けられることをお勧めします。多少の個人差はありますが、血糖値が160-180mg/dl以上になると尿糖が陽性になります。また尿蛋白が陽性の場合は、糖尿病性腎症のように重大な腎疾患が隠れている可能性がありますので、尿に異常を自覚した患者様は、まずは医療機関を受診して頂き、尿検査や糖尿病の検査を受けて頂けると幸いです。

2021年10月

Q. 糖尿病治療中です。様々な感染症にかかりやすいと言われていますが、シックデイの対処方法を教えてください。

糖尿病の患者様は血糖値が高くなることで、白血球などの免疫を担当する細胞の機能が低下し、病原菌と十分に戦えない状態になることがあります。そのような状態に陥ると、肺炎、尿路感染症、胆道感染症、皮膚感染症、歯周病などに罹患しやすく、病状も重症化しやすいことが知られています。新型コロナウイルス肺炎については、糖尿病があるからと言って罹患しやすくなることはありませんが、一度罹患すると重症化しやすくなることが知られているため、糖尿病の患者様は是非ワクチンを受けて頂きたいと思います。感染症に罹患すると、発熱・嘔吐・下痢などの症状を起こし、ご飯が食べられなくなる一方、感染のストレスによって血糖値が上がることが知られており、これを「シックデイ」と呼びます。シックデイの対策で最も重要なことは、速やかにかかりつけ医を受診して、指示を仰ぐことです。原因となった病気の治療を開始すると同時に、一部の低血糖を起こしやすいお薬やインスリンを速やかに中止しなければいけません。しかし、自分の手持ちのお薬の中で、中止にしなければいけないものがどれなのかを判断することは患者様にとって難しく、また中止するお薬を間違えると大変なことになりますので、早めに主治医の先生に確認することが大切です。主治医の先生と連絡が取れないときは、かかりつけの薬局に問い合わせて頂ければ、薬剤師さんが教えてくれることもあります。糖尿病の治療は患者様一人一人によって異なるため、「シックデイ」の管理も個別の対応が必要にあり、糖尿病の全ての薬剤を扱うことが出来る糖尿病専門医でなければ対応が難しいことがありますので、困ることがありましたら、遠慮なく糖尿病専門医を受診して頂けると幸いです。

2021年8月

Q. ケーキやアイスは控えているのに、血糖値が上がり続けています。何がいけないのでしょうか。糖尿病でも食べられるお菓子や良い食べ物はありますか?

糖尿病の病態の本質は「インスリン分泌量の不足やインスリン抵抗性の増大によるインスリンの作用不足」であり、若い頃は何を食べても糖尿病になりにくいように、生活習慣だけで糖尿病になるとは限りません。ケーキやアイスなどの甘いものを控えているのに血糖値が上がる場合は、生活習慣よりも病態的な要素が大きい可能性を予測する必要があります。人には血糖値を上げる4種類のホルモン (グルカゴン、コルチゾール、アドレナリン、成長ホルモン) と血糖値を下げる1種類のホルモン (インスリン) の作用によって、血糖値を70-140mg/dlの間に調節する生理的メカニズムが備わっています。このメカニズムが正常に働いている間は、ケーキやアイスを食べても血糖値は正常値に保たれますが、血糖値を下げる唯一のホルモンであるインスリンの経路に異常が出ると、血糖値が正常値を越えてしまうようになります。つまりケーキやアイスを控えても血糖値が上がり続ける場合は、これらの病態的な要素が大きく、生活習慣の改善だけでは限界があることが予測されますので、病態を改善するための薬剤を処方した方が良いと判断されます。インスリン分泌量の不足やインスリン抵抗性の増大などの病態の把握は、採血などでインスリン分泌能を測定することでわかりますので、糖尿病専門医を受診して頂けると幸いです。また糖尿病があっても適切な量であれば、食べたいものを食べて頂いて構いませんが、カロリーゼロの食べ物や飲み物であれば、量を厳しく制限する必要はありません。カロリーオフまたは糖質オフの食べ物や飲み物は、成分や内容によって適切な量が異なりますので、糖尿病専門医または管理栄養士にご相談下さい。

2021年6月

Q. 51歳の男性です。糖尿病と診断されました。もう食べたいものを食べられなくなったり、家族と同じものを食べられなくなるのでしょうか。

糖尿病と診断されても、量を守って頂ければ、食べたいものを食べて頂いて構いませんし、ご家族と同じものを食べて頂いて構いません。ただ糖尿病があってもなくても、基本的には節度を守った食事は心掛けて頂きたいと思います。よく誤解されている点ですが、糖尿病の病態の本質は「インスリン分泌量の不足やインスリン抵抗性の増大によるインスリンの作用不足」であり、若いうちは暴飲暴食をしても糖尿病になりにくいように、インスリンの作用が十分である限りは糖尿病にはなりません。一方でインスリンは膵臓から分泌されていますので、外科的に膵臓を摘出すると誰もが糖尿病になってしまいます。また体重が増えてしまうとインスリン抵抗性が増大し、インスリンが効きにくくなってしまいますので、糖尿病を発症する確率が上がります。一方で体重が100kg以上になっても糖尿病を発症しない方がたくさんいらっしゃるのも事実であり、インスリン分泌が十分に出ている限りは、糖尿病は発症しません。しかし、体重があればあるほど膵臓の負担は大きくなり、長期間の負荷にさらされるとインスリン分泌能が低下し、最終的には糖尿病を発症してしまいますので、ご注意下さい。糖尿病は生活習慣病と言われますが、生活習慣が全てではなく、インスリン分泌やインスリン抵抗性などの病態的な要素が背景にあります。病態的な要素は糖尿病専門医が適切な治療を行うことによって改善出来ますので、血糖値やHbA1cが下がらない患者様は必要以上に過度な食事制限を行うのではなく、糖尿病専門医を受診して下さい。

2021年4月

Q. ラジオでペットボトル症候群という言葉を聞きました。どのようなものかを教えてください。

「ペットボトル症候群」は清涼飲料水など糖分の多い飲料を大量に摂取することで生じる糖尿病です。ペットボトルに限らず、缶でもビンでも糖分の多い飲料を大量に摂取すると、糖尿病になることがありますので、ご注意下さい。糖分の多い飲料を摂取して一定以上の血糖値に至ると、糖尿病が重症化した際の有名な症状である「口喝」「多飲」「多尿」が起こります。喉が病的に乾き、飲み物が異常に欲しくなりますが、このときに清涼飲料水を大量に摂取してしまうと血糖値がさらに上がり、浸透圧利尿という作用が起こって尿が近くなります。大量に尿が出るとまた喉が渇き、「口喝」→「多飲」→「多尿」→「口喝」の繰り返しが起こるようになります。このループを断ち切らない限りは血糖値が上昇し続け、最終的には「糖尿病性ケトアシドーシス」や「高浸透圧性高血糖性昏睡」と言われる極めて危険な状態に陥ることがあります。その場合は速やかに入院してインスリンによる治療を行わなければいけません。それより前の状態で見つかった場合は、糖分の多い飲料の摂取を中止し、糖分の含まないゼロカロリーの飲み物や水、お茶に切り替えて頂ければ、インスリンを使わずに済むことも少なくありません。しかし、普段から清涼飲料水や缶コーヒーなど糖分を多く含んだ飲料を飲む方で、「口喝」「多飲」「多尿」のいずれかの症状を自覚した場合、高い確率で「ペットボトル症候群」による重症の糖尿病が見つかることがありますので、身体の異常を自覚したら速やかに糖尿病専門医を受診するようにして下さい。

2021年2月

Q. 40代女性です。最近疲れやすく、のぼせたり動悸がしたりすることがあり、更年期の症状だと思っていましたが、甲状腺の病気ではないかと、友人に言われました。甲状腺の病気について教えてください。

甲状腺ホルモンは身体の代謝を回すホルモンであり、よく車のアクセルに例えられることがあります。何らかの原因によって甲状腺ホルモンがたくさん出てしまうと、アクセルが過剰になって「甲状腺機能亢進症」と言われる状態になり、疲れやすい、落ち着きがない、痩せる、動悸、震え、多汗、不眠症などの症状が現れます。甲状腺機能亢進症を放置すると、眼球が突出したり、心臓に負担がかかって心不全や不整脈を起こすことがありますので、注意が必要です。主な原因はバセドウ病や無痛性甲状腺炎、亜急性甲状腺炎、甲状腺ホルモン薬 (チラージンなど) の過剰投与がありますが、原因疾患によって治療方法が異なりますので、甲状腺の異常を指摘された患者様は、必ず内分泌代謝専門医を受診して下さい。逆に甲状腺ホルモンが出なくなってしまうと、アクセルが回らなくなって「甲状腺機能低下症」と言われる状態になり、浮腫、寒気、低体温、肌の乾燥、無気力、動作が緩慢になる、食欲不振、肥満 (食べないのに太る) などの症状が現れます。甲状腺機能低下症になると認知症に似た症状になることから、認知症と誤診されてしまうケースもあります。実際に認知症の患者様の40人に1人は甲状腺機能低下症があるとも言われており、甲状腺機能低下症に伴う認知症の症状は治療によって改善可能であることから「治る認知症」とも言われていますので、認知症の患者様は甲状腺の検査を受けるようにして下さい。また甲状腺機能低下症は難治性の脂質異常症や貧血の原因になることもあり、治療によって改善しない脂質異常症や貧血の原因が甲状腺であったということもよく見られます。さらに甲状腺機能亢進症でも甲状腺機能低下症でも脱毛の症状が見られることがありますので、頭髪が気になる患者様も甲状腺の検査をお勧めします。首が腫れている患者様だけでなく、原因不明の症状のある患者様、心疾患、認知症、脂質異常症、貧血などがある患者様は甲状腺疾患の可能性を検討して下さい。ご質問を頂いた患者様の症状は甲状腺機能亢進症による可能性が高く、甲状腺の検査が必要になりますので、内分泌代謝専門医を受診して頂けると幸いです。

2020年11月

Q. 糖尿病で治療中ですが血糖値がなかなか下がりません。どうしたらいいでしょうか。

初めて私の糖尿病専門外来を受診される患者様の中には、「自分はこれだけ努力しているのに、何故血糖値が下がらないのか」とお話される方も少なくありません。一方でそのような患者様に対して「あなたの努力が足りないからだ」とお話される先生もいらっしゃいますが、糖尿病専門医から見れば適切な回答とは言えません。実際には多くの糖尿病の患者様はご自身で出来る限りの努力をされている方が多いのです。それでは何故努力をしているのに血糖値が下がらないのでしょうか?実は糖尿病の病態は生活習慣だけでなく、ご自身の膵臓から血糖値を下げるホルモンであるインスリンがどれだけ分泌されているか (インスリン分泌能)、またそのインスリンをどれだけ身体が受け取りやすい状況にあるのか (インスリン抵抗性) でも決定されます。つまり努力をしても血糖値が下がらない患者様の多くは、何らかの理由によってインスリン分泌能が不足しているか、もしくはインスリン抵抗性が高くなったかのどちらかの状態になっている可能性が推測されます。インスリン分泌能が極端に低い患者様の場合は、インスリン注射をしなければ血糖値は改善しませんが、インスリン分泌能が軽度に低い患者様の場合は、インスリン分泌促進薬を使用することで血糖値を改善させることが出来ます。またインスリン抵抗性が高い患者様の場合は、インスリン抵抗性改善薬を使用することで血糖値を改善させることが出来ます。糖尿病は生活習慣が全ての病気ではありません。患者様一人一人の糖尿病の病態を適切に把握し、患者様の病態に合った治療を行うことが大切です。血糖値が下がらなくて困っている患者様は、是非糖尿病専門医を受診して下さい。

2020年7月

Q. 妊娠中になる恐れのある「妊娠糖尿病」と、通常の糖尿病は症状や治療は違いますか?産後もそのまま糖尿病の症状が継続することもあるのでしょうか?

「妊娠糖尿病」とは、妊娠中に胎盤から放出されるインスリン拮抗ホルモンによって、糖尿病に至らない程度の糖代謝異常を発症することであり、出産に影響の出ない血糖値を基準として診断されるため、一般的な糖尿病の基準よりも厳格な診断基準が採用されています。また妊娠中に一般的な糖尿病の診断基準を満たした場合は、「妊娠中の明らかな糖尿病」、さらにもともと糖尿病のある患者様が妊娠された場合は「糖尿病合併妊娠」と呼び、厳密にはこの3者を区別して診断します。「妊娠糖尿病」は糖尿病に至る前の軽度な糖代謝異常であるため、通常の糖尿病の症状が出ることはなく、「妊娠中の明らかな糖尿病」であっても、一般的な糖尿病の発症初期を診ることが多いため、症状が出る前の状態で見つかることがほとんどです。一方で「糖尿病合併妊娠」では、もともとの患者様の糖尿病のコントロールによって軽症から重症まで様々ですので、中には症状のある患者様も診ることがあります。ただいずれの場合においても、多くの糖尿病の薬は妊娠時の安全性が明らかではないことから、原則的に治療は食事療法とインスリンになりますので、症状は糖尿病の程度によってそれぞれ異なるものの、治療方針は同じインスリンということになります。「妊娠糖尿病」の場合、糖代謝異常が軽度であることから、産後に胎盤が排出されれば、多くの場合で血糖値は元に戻りますので、インスリンも不要になります。しかし、妊娠糖尿病を発症した患者様は、将来的に糖尿病を発症するリスクが高いことが知られているため、生活習慣に気を使って頂いた上で、定期的な検査が必要になります。「妊娠糖尿病」は10人に1人の妊婦さんが発症すると言われています。「妊娠糖尿病」と言われたことのある患者様は、産後に血糖値が正常化しても放置せず、必ず定期的な検査を受けるようにして下さい。

2020年5月

Q. 糖尿病はあらゆる感染症にかかりやすいと聞きました。どのような感染症に気をつけなければいけませんか?

糖尿病の患者様が十分な治療を受けていない場合、免疫を担当する白血球の機能が低下し、呼吸器感染症、尿路感染症、胆道感染症、皮膚感染症、歯周病などのリスクが上がることが知られています。また高血糖が持続している糖尿病の患者様では、比較的まれとされている気腫性胆嚢炎、気腫性腎盂腎炎、壊死性筋膜炎、悪性外耳道炎、鼻脳ムコール症、フルニエ壊疽などの重症感染症に罹ることもあります。このように糖尿病は多くの感染症のリスクになることが知られていますが、その中でも特に気をつけなければいけないものは、高齢者で重症になりやすい「肺炎」です。糖尿病の患者様では肺炎に罹る確率が高く、また肺炎の診断時に血糖値が高い状況にあると、その後の死亡率が上がることも知られています。現在問題となっている新型コロナウイルスによる新型肺炎も、糖尿病、高血圧、心疾患、慢性閉塞性肺疾患、悪性腫瘍などの基礎疾患を持つ患者様は、他の肺炎と同様に死亡率が上がることが知られています。これらの基礎疾患を持つ患者様の死亡リスクを下げるためには、①糖尿病、高血圧などの基礎疾患を厳格に治療して免疫を保つこと、②感染を防ぐためにマスク・手洗いを徹底することが重要です。感染症は誰でも罹る可能性がある以上、主治医として大切なことは、患者様がもし新型肺炎に罹っても、生命に関わる状態にならないようにすることです。感染を物理的に防ぐことも重要ですが、基礎疾患の管理が不十分なときに新型肺炎に罹ると、生命の危険が生じる可能性が高くなりますので、感染予防に気を取られて、基礎疾患の管理が不十分になってはいけません。糖尿病は「万病のもと」と言われる通り、感染症も含めて非常に死亡リスクの高い基礎疾患です。感染症リスクの高い今だからこそ、糖尿病の厳格な治療を行う必要がありますので、主治医と相談の上、しっかりとした治療を受けるようにして下さい。

2020年4月

Q. 糖尿病と診断されましたが、症状は全くありません。それなのになぜ糖尿病と診断されたのでしょうか?自覚症状がないので腑に落ちません。

糖尿病の診断基準に症状の有無はなく、血糖値やHbA1cの値で診断されます。糖尿病の基準値は患者さんの人生のリスクになることが知られている値であり、全世界で共通です。それでは何故、糖尿病の診断基準に症状が含まれていないのでしょうか?それは糖尿病が悪性腫瘍と同じように、症状が出る頃には既に臓器の障害が進行している場合が多く、症状が出る前に診断を行って治療を開始する必要がある病気だからです。例えば悪性腫瘍が症状から見つかった場合は、既に症状が出る程度まで進行している可能性が高く、手術による根治が望めないケースが少なくありません。よって悪性腫瘍は症状のない段階でがん検診を行って早期に発見し、見つかった段階で治療することが原則となります。同じく糖尿病も症状から見つかった場合は、既に神経、眼、腎臓、脳、心臓などの多数の臓器が損傷されていることが多く、その時点から糖尿病の治療を開始したとしても、損傷を受けた臓器を元に戻すことは難しくなります。よって糖尿病も症状のない段階で定期的な健康診断を行い、もし糖尿病の診断がついた場合は、臓器の損傷が起こる前に速やかに治療を開始することが原則となります。同様に高血圧や脂質異常症も、人生に大きな影響を及ぼす脳梗塞や心筋梗塞を発症する前に治療を開始することが原則ですが、実際には糖尿病・高血圧・脂質異常症の治療を行わず、失明、透析、足壊疽、脳梗塞、心筋梗塞などをきっかけに入院し、その時点から糖尿病・高血圧・脂質異常症の治療が開始される患者さんも少なくありません。入院した患者さんの多くは「症状がなかったので治療を放置していたが、まさかこんなことになるとは思わなかった」とお話されますので、糖尿病・高血圧・脂質異常症と診断された患者様は、症状に関わらず適切な治療を受けて頂けると幸いです。

2020年2月

Q. 子供も糖尿病になると聞きました。炭水化物ばかりで味が濃いものが好きです。野菜は食べてくれず、運動は好きでやせ型でもあるのですが心配です。

近年、糖尿病も若年化が進んでおり、当院でも10代の患者さんが通院されています。糖尿病はインスリンの絶対的欠乏による1型糖尿病と食生活の影響が大きい2型糖尿病に分類されますが、最近では食生活の変化もあり、2型糖尿病の若年化が世界的に進んでいることが問題となっています。糖尿病は日本人の男性の寿命を8年、女性の寿命を11年縮めることが知られていますが、若年発症の場合はさらにその影響が大きくなることが予想されるため、早い段階から厳格な治療が必要になります。「食育」という言葉がありますが、幼少期の食事の嗜好は成人になってからも大きく影響します。幼少期から味の濃いものに慣れてしまうと、徐々に味覚の感知能力が低下してより濃い味のものを求めるようになることが知られています。成長期の子供は必要な体重当たりのカロリー数が成人よりも多いため、ご相談頂いたお子さんのように、炭水化物や味の濃いものを食べてもやせたままの方もいらっしゃいますが、成長期が終わる頃までに食生活を変えないと、高い確率でその後肥満に至り、成人後の糖尿病や高血圧の発症リスクが高まると思われます。現代の食事は安価な炭水化物と塩味の強いお惣菜が多いため、味の濃いものに慣れてしまうと比較的高価で味の薄い野菜・きのこ・海藻類などは選ばれにくくなりますが、野菜・きのこ・海藻類も調理の仕方によっては、美味しくバランス良く食べることが可能です。最近、10代のお子さんの肥満を当院にご相談される方も増えてきましたが、医療機関では生活習慣病のリスクを上げずに、野菜・きのこ・海藻類などを美味しくバランス良く食べるための栄養指導を行うことが出来ますので、食事に関してご相談のある患者様は是非栄養指導を受けて下さい。

2019年10月

Q. 慢性腎臓病と糖尿病の関係について教えてください

慢性腎臓病が進行し、腎臓の機能が廃絶してしまった場合、透析療法を行うことになりますが、実は透析の原因で最も多い疾患が糖尿病であり、全体の44%を占めています。1年間で約16000人の患者さんが糖尿病性腎症によって新たに透析に移行しており、年間の透析の医療費が5-600万円になることから、国を挙げて「糖尿病性腎症重症化予防プログラム」が始まっています。糖尿病性腎症は個人差もありますが、糖尿病を約5年放置すると発症し、約10年で足の浮腫などの具体的な症状が出現し、この頃には腎臓を正常に戻すことが困難となります。糖尿病性腎症は正常から透析に至るまでの段階を5つに分けて評価しますが、採血と尿検査で大よそのリスク判定が出来ますので、糖尿病の患者様は是非自分の腎臓の状態を主治医に聞いてみて下さい。糖尿病性腎症は一定の時期 (4期) を過ぎると急速に悪化することが多く、透析を防ぐためには早期の治療が大切です。特に糖尿病の患者様で「尿蛋白陽性」と言われている患者様は要注意となりますので、早めに糖尿病専門医を受診して下さい。近年では糖尿病の治療薬の進歩もあり、薬の使い方次第では早期の糖尿病性腎症であれば治すことも出来るようになってきました。優れた糖尿病専門医は血糖値やHbA1cを下げるだけでなく、患者様の合併症を的確に把握し、患者様一人一人の合併症に合った治療を組み立てることが出来ますので、糖尿病性腎症がある程度進行したとしても対処出来るようになってきました。しかし何よりも大切なことは、早期に糖尿病の治療を開始し、糖尿病性腎症そのものを発症させないことです。実際に糖尿病の早い段階から適切な治療を受けている患者様が透析療法に移行することはほとんどありませんので、血糖値が高いと言われたらすぐに医療機関を受診するようにして下さい。

2019年7月

Q. 先日会社の健診で糖尿病と診断されましたが (空腹時血糖165mg/dl、HbA1c 8.1%)、特に自覚症状がないので通院するのが面倒に思っています。症状がなくても病院に行くべきでしょうか。

糖尿病は自覚症状が出る頃には不可逆的な臓器障害を伴っている場合が高く、その頃から治療を開始しても損傷を受けた臓器を元に戻すことが難しいため、悪性腫瘍と同じように糖尿病も症状が出る前に治療を行わなければいけません。例えば糖尿病の合併症の一つに失明がありますが、実際に視力障害を生じた時点から治療を開始した場合、失明は免れても低下した視力を元に戻すことは困難です。また足の浮腫が出現する頃には糖尿病性腎症が進行している可能性が高く、治療によって進行を遅らせることは出来ますが、実際に透析への移行を防ぐことが困難である場合も少なくありません。さらに糖尿病性足壊疽も足が壊疽した段階で治療を開始したとしても、切断は免れるかもしれませんが、損傷した足を元に戻すことは困難です。これらの合併症は早期から治療を開始した場合は発症することがありませんので、糖尿病は早期治療が極めて大切な疾患であると言えます。ご質問を頂いた患者様のHbA1c 8.1%とのことであり、糖尿病を発症してから時間が経っている可能性が高いことから、速やかな糖尿病の治療の開始と同時に神経、眼、腎臓などの合併症の検査が必要です。個人差はありますが、糖尿病は大よそ5年放置すると神経、眼、腎臓の障害が始まり、10年放置すると神経障害による足の痺れ、網膜症による視力障害、腎症による足の浮腫などの症状が出現し、この頃には損傷を受けた臓器を元に戻すことが困難な状況になります。このように糖尿病は徐々に進行する疾患であるため、気が付いた頃には取り返しが付かなくなっている場合も少なくありません。糖尿病の放置は男性の寿命を8年、女性の寿命を11年短くすることが知られていますので、是非とも患者様にはHbA1c 6.0%を超えた時点で一度来院して頂けると幸いです。

2019年4月

Q. 父が糖尿病ですが、高齢のため通院が難しくなってきており、在宅医療を検討しています。インスリン注射もしています。糖尿病での在宅医療では具体的にどのような診察・治療をしてもらえるのでしょうか。

基本的な糖尿病の診療は在宅医療でも外来でも同じことが出来ますので、インスリンを使用している患者様でも気軽に在宅医療を申し出て頂いて構いません。訪問診療時に採血を行ってHbA1cを測定し、インスリンを使用している患者様につきましては、自己血糖測定の記録を見ながら飲み薬とインスリン単位数の調節を行います。尿検査もスピッツを頂ければ、次回の訪問診療時に結果をお渡しすることが可能です。私たち糖尿病専門医にとってインスリンを使用している患者様の在宅医療は難しくありませんが、在宅医療を行う糖尿病専門医が未だ少ないことから、糖尿病の管理に困っている在宅の患者様も多いのではないかと推測されます。またインスリンの患者様が介護施設に入居する際、インスリンを理由に断られる場合があることも大きな課題ですが、インスリンを始めとする注射薬は介護現場からの抵抗が強いことも事実です。治療上、インスリンを使わずに済むのであればそれに越したことはありません。そこでインスリンを使用している患者様に最もお勧めしたいことは、現在使用しているインスリンを離脱出来ないかどうかを糖尿病専門医に相談することです。ご相談を頂いた患者様は長くインスリンを使用されているのではないかと推測しますが、最近では糖尿病の飲み薬が大きく進歩しており、飲み薬を上手に併用することでインスリンの離脱や注射回数を減らすことが出来る可能性があります。「1型糖尿病」や「インスリン依存型糖尿病」と診断された患者様のインスリンの離脱は困難ですが、「2型糖尿病」と診断されている患者様では、インスリンの離脱や注射回数を減らすことが出来た患者様も多くいらっしゃいますので、注射を負担に感じる患者様は一度最寄りの糖尿病専門医に相談してみて下さい。

2018年12月

Q. 70歳男性です。数年前より糖尿病治療を受けているのですが、足の痺れが止まりません。HbA1c 6%台前半で、血糖コントロールが良くても神経障害は治らないのでしょうか。

糖尿病性末梢神経障害は発症早期であれば血糖のコントロールだけで症状が改善することもありますが、中等度以上に進行した場合は進行を止めるだけで精一杯となり、実際に症状を改善させることは難しくなります。神経障害は糖尿病を数年間放置すると発症しやすくなりますので、ご質問を頂いた患者様はもしかしたら神経障害が一定以上進行した段階で糖尿病の治療を開始されたのかもしれません。糖尿病による臓器障害は神経、眼、腎臓、足、脳、心臓と多岐に渡り、症状を自覚する頃には臓器が相応の損傷を受けた後になりますので、 元の状態に戻すことは容易ではありません。一定以上進行した糖尿病の合併症を元に戻すことが出来ないため、糖尿病を早期に治療して合併症の発症を防ぐことが大切ですが、最も安全な方法は糖尿病の発症そのものを止めることです。実は糖尿病は長い時間をかけて発症することがわかっているため、最近では「境界型糖尿病」や「前糖尿病」と言われる糖尿病発症前の段階が注目されるようになってきました。糖尿病の診断基準の一つは空腹時血糖126mg/dl (HbA1c 6.5%) ですが、空腹時血糖100mg/dlを超えた段階から将来的な糖尿病の発症リスクが上昇し、「境界型糖尿病」と言われる空腹時血糖110-125mg/dl (HbA1c 6.0%) の段階になると、その後多くの患者様が糖尿病に至ることがわかっています。つまり糖尿病は長い時間をかけて少しずつ血糖が上昇し続けた結果として発症する病気ですので、早い段階から検査を受け、生活習慣の改善を行うことによって発症自体を予防することが可能です。糖尿病は発症してしまうと認知症や悪性腫瘍のリスクにもなり、男性の寿命を8年、女性の寿命を11年縮めてしまう病気ですが、適切な治療によって合併症の進行を止めることは出来ます。神経障害そのものを治すことは出来なくても、症状を緩和し、進行を抑制することは十分可能ですので、主治医の先生とよく相談して頂ければと存じます。

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